日本のデニム黎明期に国産ブランドの中心であったキャントンのストレートジーンズ。キャントンブランドは、大石貿易がアメリカの生地メーカー CANTON TEXTILE MILLS. INC.の生地を使用して国産のジーンズを製造すべく1963年に創設し、1968年まで継続した。以後、大石貿易は、生地メーカーをコーンミルズに変更し、ビッグストーンブランドを創設している。また、生地メーカーの米CANTON社は、1971年に"CANTON X-WEST"を商標登録し、1973年から同社の生地を使用したジーンズをX-WEST CANTONブランドで展開している。なお、現在のキャントンブランドは、2000年代に別会社が商標を継承したうえで復活させたものである。

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フラッシャーとタグが付いたデッドストックだが、製品段階でワンウォッシュされている。
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見た目はやや細身のストレートだが、テーパードはほどんど見られない。
canton14221_背面
canton14221_紙パッチ

紙パッチ

まだ割れてはいないが、硬化が進んでおり、穿いているうちに割れてしまうと思われる。質感は、CANTON存続時の1960年代中ごろから後半のリーバイスのものと同じようなものになっている。
canton14221_フラッシャー

フラッシャー

やや小さめのフラッシャー。"CANTON TEXTILE MILLS. INC."の文字が下に入るなど、米CANTON社の生地を使用していることを強調したものになっている。下には「国産品」と表記されていることから、米国生地を日本で縫製したことが分かる。
canton14221_タグ

タグ

品番・サイズが表記されたタグ。価格は3,700円とあり、1960年代後半の物価水準から見ればやや高めであったように思われる
canton14221_内タグ

内タグ

ウエストベルト内部には、刺繍タグが付く。
canton14221_バックポケット

バックポケット

横一文字のステッチで、後のビッグストーンやビッグジョンにも継承されている。
canton14221_トップボタン

トップボタン

おそらく汎用のものであると思われるトップボタン。他の国産ブランドでも同じ模様のボタンは散見される。
canton14221_ジッパー

ジッパー

ジッパーは、国産らしくYKKのジッパー。
canton14221_リベット

リベット

LEEのリベットに似た形のリベットだが、ブランド名などの刻印はない。
canton14221_コインポケット

コインポケット

ポケットの生地、向こう布ともに、生地は縦使いになっている。
canton14221_アウトシーム・セルビッジ

アウトシーム・セルビッジ

両端をロックして、織り伏せ縫いされており、耳は見られない。裾はシングルステッチだが、縫い目のズレがあるのか、ユニオンスペシャルのチェーンステッチで仕上げたように斜めにうねったアタリが付いている。
canton14221_生地

生地

オンス数は不明だが、触感からは中庸なオンス数だと思われる。1960年代後半の生地らしくスラブ感はやや弱めだが感じられる。ネップはほとんど見られない。ワンウォッシュがかかっているせいかかなり青みと赤みが強く感じられる。リーバイスなどで使用されていた当時のコーンミルズ社の生地と比べても、筆者にはあまり違いは感じられなかった。

表記サイズ ウエスト
ヒップ 前股上 後股上 ワタリ 股下 裾幅 総丈
W28/L32 71 94 25 31.5 25 81 20 104